白髪の鬼

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白髪の鬼

若気の至り、その言葉が一番しっくりくるのかもしれない。だが、そんな言葉で許されるものではない事もある。 これは警告である。 最悪を想定せず、善悪の区別をせず、取り返しのつかない事をした俺が辿り着いた運命。不安と恐怖。因果応報の末路。 あれは暇を持て余した、俺たち松山拓郎( まつした たくろう)桐谷悠隆( きりや ゆたか)、そして森下( もりした )つぐみが深夜の公園でたむろしていたのが始まり。 別に今日に限った事ではない日常的な事だった。おれとつぐみはバイトで生活をしている時間を持て余したフリーター。悠隆は就職はしていたものの、やり気もなく遅刻の常習犯。暇なおれ達とこんな深夜まで遊んでたら朝が起きれる訳もなく、だらしない生活を送っていた。 公園の街灯の下にあるベンチにつぐみと俺が座り、悠隆はベンチの向かいにある自販機で買った珈琲を啜っていた。行く所も金もなく、三人でただ時間を潰す。話す内容は俺やつぐみ、悠隆の仕事での愚痴が大半。寒空の中、楽しくもない会話。それでも、誰もいない部屋でぼんやりと過ごすよりは随分マシに思えた。 「マジ寒いな…おい、拓郎の部屋に行こうぜ。」 珈琲を飲み終えた悠隆が珈琲の缶を、自販機の横にあるゴミ箱にバスケプレイヤーの真似をしながら投げ入れる。 見事にゴミ箱の縁に当たって缶は道に静けさを打ち消すように盛大な音と共に転がった。つぐみがそれを見て可愛らし声を上げて笑う。 そんなつぐみを横目で見ながら、悠隆の提案に小さく溜息をついた。 「俺の部屋はダメだ。今度騒いだら大家に追い出されるんだよ。お前等が来た時に騒ぎまくって怒鳴り込まれただろうが。」 .
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