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昨晩の静かな雪が、あたり一面に降り積もっていた。晴天の空は高く、驚くほど青い。銀杏の木々が、裸の枝を天に伸ばし、朝の太陽に輝いた。
僕は友と、乾いた空気に白い息を吐きながら、目的地もなくただ冬の朝を歩いていた。
彼とは、中学一年生の時に同じクラスになったときからの付き合いなので、かれこれ6年になる。
彼の優しさ、笑いのツボ、話す話題、考え方、情けない部分、すべてが好きだった。
彼の隣は、僕の居場所だった。
僕にとって彼は、かけがえのない友で唯一の存在だった。
中学の頃から、大学は東京に行くのだと一途に言っていた彼が実際に東京に行く日が、もうすぐそこまできていた。
ここしかしらない僕は、東京という街を知らない。
東京の何が、それほどまでに彼の心を捉えて離さないのか、僕にはわからなかった。
ここではだめなのだろうか。
一日一日と近づいてくる、来るべき春の彼の旅立ちに、僕は言いようもない寂しさが胸に押し寄せてくるのを感じていた。
君を連れ去ってしまう春が、永遠に訪れなければ良いのに。
積雪を踏みしめながら、このどうしようもない寂しさに泣きそうになった。
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