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あなたが来るのを待っている
桜が咲き始めたお彼岸の日、わたしは父が運転する車で母のお墓参りにやって来た。
毎年、お彼岸の入りに来るのだが、父の仕事の都合で最終日となってしまった。
お寺の駐車場に止まっている車も、やはり少なかった。
私は近所のお花屋で買った仏花を持ち、父は水を入れた手桶と火のついた線香を持ちながら、石畳の続く通路を歩いた。
いつものように奥から二番目の通路を曲がり、母が眠るお墓まで無言で歩く。
通路の両脇には別の誰かの墓石が並び、そこにはすでに美しい花が飾られ、線香の煙がまだ立ちのぼっているところもあった。
中には忘れられてしまったのか、花も線香もない寂しげな墓もあった。
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