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ハッカーの眼
世の中には沢山の眼がある。ノートパソコン、携帯電話、駅の構内、そして街中の監視カメラ。それらのほとんどはインターネットという糸で繋がっている。ほんの少しの専門知識と管理の甘さを突けば、俺の自宅のパソコンもその眼に繋げることができる。
この文章を読んでいるあなたの携帯電話やパソコンも例外ではない。使っている最中に少し反応が鈍いと感じたら、それは俺の眼があなたを見ている時だ。
使い慣れたパソコンのキーボードを叩く。六つ並んだモニターの一つに、繁華街を行き交う人々の様子が映し出された。俺は今、自宅のアパートのパソコンから世の中の様々なカメラにハッキングをしている。
カメラの眼を盗む理由、それは好奇心だ。人は物語の塊だ。高級外車に乗るおっさん、自転車に乗って走るフリーター風の男、仲良さそうに話す二人組の女子高生。それらを眺めながら、彼らの送ってきた人生を想う。
初めは腕試しのつもりだった。しかし見た人間を一方的に支配しているような優越感が俺を病み付きにさせた。特に街頭に設置された監視カメラをよく見るようになった。高い位置から見下ろしている感覚が味わえるからだ。
俺は通帳やクレジットカードから金を引き出すようなことはしない。カメラの映像を見る、ただそれだけを行う。それだけなら捕まるリスクは格段に低くなるからだ。ハッカーには臆病な人間が多い。
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