妻の物語

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 2018年12月16日。  いつもの毎日とは違った朝だった。結婚して4年も経つのに、出会った頃よりもぎこちなく雰囲気が重かった。昨日の夜の大喧嘩のせいだった。  戦闘機パイロットの大尉である6歳年上の夫は、所属する中隊の若手達の教育係も務めていて、常に隊の模範として厳しい目を光らせている。しかし昨日、血気盛んな部下同士でちょっとしたいざこざがあったらしく、そのせいか帰宅した夫はその時のイライラも少し持ち帰っていた。いつもなら夫の僅かな異変も察知できた私であったが、その時は遅れていた家事を必死にこなしていた事もあり、気付く事が出来なかった。  何があったかは殆ど忘れてしまったが、多分私が夫に素っ気ない対応をしたのかもしれない。それが癇に障ったのか、夫は怒り、ついに大喧嘩へと発展してしまったのだ。お互いに感情を爆発させ、一瞬静まり返った時にその喧嘩は突然終わり、今まで罵声が嘘だったかのようにお互いに黙ったまま夕食を食べ、テレビを見て、そして寝た。その翌日、つまり今日、不穏な空気の中で朝食を食べ、仲直りのタイミングを逃し続けたまま夫は出勤していった。
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