妻の物語

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 テレビに映されたのは、鹿嶋市内の住宅街を蹂躙する爬虫類のような巨大怪獣だった。長い胴体の上半身で何度も飛び跳ねては、周囲にある一軒家やマンションといった建物を破壊し、ブロックを散らかすお転婆な子どもの如くその大小様々な瓦礫を撒き散らしていた。  しばらく見ていると、上空に綺麗に整列された黒い点々が現れ、それらが巨大怪獣の周辺を旋回し始めた。嫌悪感を感じる程気持ち悪く暴れ回る巨大怪獣より、私はその黒い点々を凝視した。この中に、私の夫が乗った戦闘機がある……あのヒラメのような丸っこいデザインの新しい戦闘機は、夫がいる部隊と琉球の方にしか配備されていないはず……という確信のもとに。  そんな私の事などを知る訳が無い女性アナウンサーは、カメラに映る現場の惨状を伝え続けていた。後にそれは、現場に駆け付けたHUGOFの対怪獣特殊部隊の戦闘機部隊と巨大怪獣の戦いの実況へと変化していった  「たった今上空に、HUGOFの戦闘機部隊が到着したようです、この部隊……あっ、上空の複数の戦闘機から巨大怪獣に向けてレーザー砲が発射されました!」
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