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長い長い獣道が続いている。一体どれだけ歩いたのだろう。もう脚はくたくた。俺は地面にしゃがみ込んでしまった。こんなに歩いたのはいつ振りだろう? ……もしかしたら初めてかもしれない。今まで家から出たことなんてあまりなかったから。
――ぽつり。
滴が顔にあたった。……雨だ。空を見上げると瞬く間に天気は下り坂、土砂降りの雨だった。……今日は一日晴れると思っていた。
どこかで雨宿りしないと。そう思ったが、もう脚が動かない。雨足は強まるばかり、体温はどんどんと奪われていくのがわかった。……細い体が震える。体調だって、良いとは言えなかった。
――わかっていたけれど。
ここは山の中、人気なんて全くない。……ましてや自分を助ける人なんて、来ない。山を探索するのは楽しかったけれど。
「…………さむいな」
ぽつり、独り言。頭がくらくらする。……熱でも出てきたのだろうか。体に力が入らず、ついに地面に突っ伏してしまった。
……ここで、自分は終わりなんだな。
ここは深い深い山の中。どうせ生きたって、ここから歩いたって、いつか獣の餌になるのは目に見えていた。
少年は諦めたように、静かに、そして呆気なく瞼を閉じたのだった。
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