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まさか、本当に自分の目の前に居る彼が、その『化け物』なのだろうか。
ぬっ、と彼の顔がシキを覗き込んだ。
「……ふふ、久しぶりの生贄。……お前を喰らってやろうか、人間」
冷たい声で、温度のない視線をシキに向けながら『化け物』はそう言った。
思わず怖くて、目をギュッと閉じた。……その様子を見て彼は
……くつくつと笑っていた。
……? 頭に疑問符が浮かぶ。どうして、そう問いかけたかったが、ぐっと、堪えた。
「あはは! そんなの冗談だって。人間なんて食べないよ、俺は」
……何だこいつ、明らかに俺の反応を見て……、楽しんでいるじゃないか。ムッと、眉間にシワが寄る。不満げな様子を見て彼は満足したようで、
「でも俺は人間じゃない、半妖。お前の村に伝わっている伝承の、張本人だ。永い間、生き続けている」
また彼はあのニタリとした笑みを浮かべてそう言ったけれど、
「そうなんだ」
いつの間にか、術は解けていた。シキの口から出た言葉は、それだけ。
だって、彼は自分でその「化け物」だと言ったのだ。きっとそうだろう。自分が彼から感じた違和感は、そうに違いない。さっきだって、彼に術を掛けられた。……不服だけれど。
「……お前、驚かないのか? ……どうして怖がったりもしないんだ……?」
次に呆気にとられるのは彼の方だった。ポカン、という顔をしている。……だって君は人間を食べないって自分から言ったじゃないか。
「……お前、……うん。やっぱり一緒に来なよ、人間」
……彼は少し面食らった様子だった。![image=512436328.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/512436328.jpg?width=800&format=jpg)
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