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彼女が占われてからの三カ月後―
―彼女は亡くなりました。
その日は占い師達が告げた、三か月目でした。
彼女は飲酒運転の車にはねられ、即死でした。
あまりに呆気無い彼女の最期に、『あたし』は泣くことすらできず、呆然としたままお葬式に参加しました。
「はぁ、はぁ…!」
『あたし』は走っていました。
向かう先は最初に占ってもらった、あのタロットカードの男性の元です。
平日の朝ならば、まだお客も少ないはずだという考えは、当たっていました。
ビルが開いて、すぐに男性の所へ向かいます。
人はまだ占い師達しかおらず、お客はいません。
『あたし』が店の中に飛び込むと、男性は神妙な表情で頷きました。
「いらっしゃると思っていましたよ」
「っ!?」
『あたし』はたまらず駆け寄り、彼の両腕を掴みました。
「あのコが…死んだの。どうして? 三か月間は幸せだって、言ってたじゃない。あなただけじゃない、他の占い師達だって口をそろえて言ってたのに…!」
瞼を閉じると浮かぶ、彼女の幸せそうな笑顔。
それが一瞬にして失われたなんて、信じたくはなかった。
「…他の占い師の方々も、私と同じことを言ったんですね」
彼は『あたし』を落ち着かせようと、肩に手を置いた。
「…ええ。あなたに占ってもらった時、様子が変だったから、他の占い師の人達にも占ってもらったの」
「そう、でしたか」
他の占い師も頼ったことを、彼は不快に思っていなかったようでした。
それが不思議で、顔を上げます。
「あなたには気付かれていましたか…。実は彼女の占いには、続きがあったのです」
「続き?」
「ええ。我々占い師はあくまでも、お客様の求める答えだけを告げます。それ以外のこと、…避けられないことは特に口には出さないようにしているのです」
あの時、彼女が求めたのはこれからの運勢のことです。
それについて、占い師達は正確に答えてくれました。
彼女が疑問を口にすれば、笑顔で答えてくれました。
でも…ああ、そうか。
彼女は<あのこと>を口には出さなかったんです。
それに気付いた『あたし』は、彼から手を離しました。
「…彼女の期間限定の幸せは、前に告げた言葉の通りなんですよ」
…そう、彼は言いました。
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