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「蒼依?どうした?」
「…あの女の人達…怖い……」
俺の手を強く握りしめる蒼依の手は震えていて、蒼依の顔も強ばっていた。
「大丈夫だよ。ただの同じ大学の人なんだし。」
「でも…そんな雰囲気しない…怖い…早く帰ろう、兄ちゃん。」
「蒼依……」
こんなに顔が青ざめてる蒼依は初めてだ。どうしよう…ここで帰っちゃうのも彼女達に何か悪いし…。
「ねぇねぇ、後ろに隠れてる子って立花君の弟君?」
「え?あぁ…うん。」
「可愛い~!立花君とは全然似てないんだね~」
蒼依は余計に顔を真っ青にしている。体も震えていてこれ以上見ていられない。
「…ごめん、俺らこれから買い物しに行かなきゃいけなくて…そろそろ行くね。ごめん。」
「あ、そうなんだ。ごめんね?また話そうね~」
そして、彼女達とは別れた。
「蒼依、もういなくなったから大丈夫だよ。」
「…本当?」
「うん。でも、どうしたの?あんなに怖がるなんて珍しい。」
「……」
そう聞くと、蒼依は俯いた。何か言えないことなのだろうか?すると、蒼依が口を開いた。
「…兄ちゃん…ごめん…今まで黙っててごめん。実は僕…幽霊が見えるの。」
「えっ……?」
霊が見える?霊感体質?
「蒼依。霊が見えたの?」
「う、うん。中一の時から…。でもね、僕のこの霊感体質…普通の幽霊が見える人とは違うんだよね。」
「違う?それって…」
そう言おうとした途端、背後から突き刺さるような痛みが走った。
「……うっ」
胸を見ると服が真っ赤に染まっていた。血だ。真っ赤な血。俺は足から崩れ落ちた。
「兄ちゃんっ!」
「立花君、いい絵になってるよ~」
振り向くと、さっきの彼女達がいた。一人はナイフで俺を刺し、もう一人はその様子を携帯に撮っていた。
「ねぇ、梨花~。もっとメッタ刺しにしてやった方がいい絵が完成するんじゃない?」
「いいね~じゃあ、そうする?」
まずい…このままじゃ、蒼依まで殺られる。
「逃げろ…蒼依。」
「で、でもっ!兄ちゃんを置いて逃げられないよっ!」
「逃げるんだ!このままじゃ、お前までアイツらに殺される。早く逃げろ!」
「……っ…兄ちゃん……ごめんっ!」
そう言って、蒼依は走って逃げていった。これでいいんだ、蒼依が無事ならそれで。
「あーらら、弟君逃げちゃったよ。いいの?」
「いいんだよ。殺るなら俺だけにしろ。」
「いいわ。お望み通り殺してあげる。」
そして、俺はその女達に殺された…はずだった。
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