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「……不幸?」
言っていることがよく分からずに聞き返すと、母さんが口を開いた。
「時雨、例えば…時雨の大切な人が死んだとするじゃない?」
「えっ?う、うん。」
「死因は原因不明。言ってしまえば、蒼依が見える霊のせい。」
「え、えーと…」
「つまり、僕が見える霊は大体が悪い霊なんだよ。不幸を招く霊ばかりみたいで……。兄ちゃんがあの人達に刺されたのだって、僕が見えた霊のせいで…」
あぁ…そういうことか。何となく二人の言っていることが理解出来た。
「話の内容は何となく理解出来たけど、蒼依のせいではないと思うよ。」
「僕のせいだよ…僕が見えるから……」
蒼依の体が震えを増す。
「じゃあ、私は帰ってやることがあるから先に帰るわね。蒼依も遅くならないようにね。」
「……うん。」
そう言って母さんは帰って行った。病室には俺と蒼依だけ。蒼依の顔色を伺うと、青ざめていた。体も震えが止まらないらしいのかずっと震えてる。俺は無言のまま、蒼依を抱きしめる。
「…兄…ちゃん……?」
「大丈夫…もう無理しなくていいから。」
「無理なんて…してないよ…?」
「そう?俺にはそうは見えないけどね。」
「……っ!」
蒼依はその後はずっと黙り込んだままだったが、蒼依も俺を抱きしめているうちに、震えが止まっていくのを感じた。
「兄ちゃん…いつ退院できるの?」
「分かんねぇ、医者にしばらく休めって言われてるしな…俺だって早く退院して学校行きたいよ。」
夕方五時半、蒼依はまだいてくれて話し相手になってくれていた。
「そういえば蒼依、先月に告られたっての本当?」
「えっ…何で知ってるの?」
「母さんから聞いた。ラブレターまで貰ったらしいね?」
ニヤニヤしながら蒼依に言う。
「か、関係ないでしょ!」
「そうだね~。で?結局返事はどうしたの?」
「…ちゃんと丁重にお断りしたよ。」
「へぇー、何で?」
「だって僕…好きな人いるから……」
その時、俺の心がズキンと痛むのを感じる。…あれ?何でこんなに痛いの?痛む心を抑えて俺は何とか返事をする。
「…そっか、お前もそんな年頃か。」
「ていうか、兄ちゃんはどうなのさ?いっつも女の子に告白されたりしてるじゃん。僕と違ってイケメンだしさ?彼女いないの?」
「いないよ。別にイケメンってほどの顔面偏差値ないと思うけどな~俺。」
「兄ちゃん、ムカつく。」
「何でっ!?」
そんな他愛もない会話をして俺らは楽しんだ。
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