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「初登庁日の前々日に、上京する予定でいます。その時、ナオさんに同伴をお願いして欲しい、そう申しました」
「そうだっけ⁉」
「はい。新婚の奥様を、福光氏と、鏡に、きちんと引き合わせたいので、とも言いました」
「う~ん、ごめん。記憶にない」
「そうでしょうね、貴方の頭の中は、二度目の新婚生活で一杯一杯なのくらい、馬鹿でも分かりますよ」
橘内さんって、結構な毒舌かも。
「ナオだけ⁉」
海斗が、今にも泣きそうになってる。
「海斗さんは、あと十日もすれば、夏休みですし、あとから合流されたら⁉今、大事な時期でしょう⁉」
「期末考査は一応、終わったけど・・・」
海斗が、ぷぅーと、頬っぺたを膨らませる。
「修学旅行は一人ですよ。今から慣れておいたらどうですか⁉」
「橘内さん、友達いないでしょう‼」
「今の所、仕事と、誰かさんの子守りで手一杯なので、必要性は感じてません」
「海斗、どうせ、負けるからそのくらいにしておけ」
二人の会話に、一樹さんが割って入った。
「ナオには、色んな経験をさせたい。貸して欲しい」
「・・・」
暫く、海斗黙ってたけど。
台所から顔を出したおばさんに、よく可愛い子には旅させよって、言うじゃない。行ってきたらいいいのよ、お店は海斗が、手伝ってくれるし、と言われて、
「はぁ、手伝うなんて、一言も言ってないから」
結局は、上手く丸め込まれてしまった。
「そう言えば、橘内。前々日移動って言ってたよな、そうなると・・・もしかして、明日⁉」
「だから、こうしてわざわざ足を運んだのです。お昼12時発の新幹線に乗車しますので準備しておいて下さい。あと、ナオさん」
「はひ」
いきなり振られ、思わず、声が裏返った。
すみません、変な声だして。
「子供連れなので、必要最低限の荷物で大丈夫ですよ」
ーー子供⁉
あぁ、そうか、一樹さんの事だ。
「向こうのスタッフが、全て、準備してますので、寄り道せず、お願いします」
橘内さんの目が言ってる。
公共の場のマナーは、守りましょう‼って。
それは、僕じゃなく、一樹さんに言ってよ‼
暴走厳禁って‼
「橘内さん、良かったら、オムライスどうぞ」
「ありがとうございます」
おばさんが、橘内さんの分も運んできた。
一口食べて、美味しいですって、笑顔で。表情が、少しは和らいだみたい。
良かった‼
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