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「寂しかっただろう。ごめんな、一人にして。買い物?」
「橘内さんに連れて行って貰った」
一樹さんが、手にぶら下げていたレジ袋の中を覗き込む。苦手な、アスパラガスが先に目に入ったのか、顔が曇っていく。
「ごめんね」
「どうせ橘内だろ⁉いいよ、頑張って食べるから。口直しは、ナオがいいな」
腰に彼の腕が回ってきて、抱き寄せられた。
もう、それだけで、心臓がドキドキして、今にも破裂しそうになった。
だって、二人きりになるの、初めてだもの。
顔を真っ赤にして、頷くのが精一杯。
「お取り込み中の所、申し訳ありませんが」
その時、鏡さんの声がしてきて、慌てて離れた。彼は、テーブルに寄り掛かり、腕組みをし、唇を一文字に結び、顔をしかめていた。
「一樹さんといい、橘内といい、二人共、甘すぎるんだ」
怒声が部屋の中にこだました。
橘内さんの名前も出てきて、回りを見渡したら、玄関先に立っていて、驚いた。
「男の嫁など、認めない。さっさと、一樹さんと別れろ」
「礼さん、さっきも話しをしたけど」
「いくら、先代が公認した仲とはいえ、鏡家当主である、この私が認めない限り、二人の交際は一切、認めない」
今、鏡家の当主って言った⁉
まさか、彼が・・・。
そんな・・・。
信じられなくて、鏡さんの顔を見たけど、逆に、睨み返され、
「さっさと、別れて、家に帰れ」
痛烈な言葉を浴びせられた。
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