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ーーあれ、誰かいる⁉
浴室から出ると、消したはずのキッチンの明かりがついていた。
合鍵を持ってて、自由に往き来出来る人は一人しかいない。
ーー一樹さんが、苦手って言ってた意味、今なら、分かるような気がする。
「鏡さん、お疲れ様です」
声は掛けたくないけど・・・。
でも、目の前にいるのに、無視する訳にもいかない。
「・・・」
ちらっと僕の方を見たけど、また、鼻先で笑われた。
「礼さん、ナオに失礼でしょう」
後から来た、一樹さんの声が、珍しく、苛立ってる。
「無視するのは構わない。でも、そうやって、ナオをバカにするような事は止めてください」
「別に、これが、普通ですよ。それはそうと、これが、明日のスケジュールです。ご確認を」
テーブルの上に置かれたパソコンの画面を、一樹さんの方に向けた。やや暫くたって、
「ランチ会⁉」
「えぇ、福光先生の奥様が主催のランチ会です。そこの小さい方に出席して頂きます」
ーー鏡さんは、なんで、僕の名前を呼んでくれないんだろう。゛槙家の嫁゛として認めてないから⁉
「男の嫁などありえない。せいぜい、恥をかいて、さっさと、一樹さんの前からいなくなって下さい」
また、痛烈な言葉を浴びせられた。
悔しいというより、悲しい。
「礼さんは゛愛別離苦゛と言葉をご存知ですか⁉」
黙っていた一樹さんが、静かに口を開いた。
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