甘え上手な彼

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甘え上手な彼

お腹を空かせた橘内さんも、カレーの匂いに誘われて戻ってきた。 一樹さんは、僕と二人きりの時間を、苦手な二人に邪魔をされ、かなり、ご機嫌ななめみたい。只今、アスパラの肉巻きと、格闘中。 つんと、拗ねた彼の顔が、可愛い。 「鏡、食べないの⁉」 鏡さんは、長いその足を組んで、ぷいっと仏頂面のまま、黙り込んでる。 「食べないなら、食べますよ」 橘内さんが、カレーを盛った皿を持ち上げると、鏡さんが、すぐに取り返した。 「誰も食べないとは言ってないだろ」 「ナオさんの作るご飯はとても美味しいですよ」 橘内さん、フォローしてくれてありがとう。鏡さんは、ようやく、僕の作ったご飯を食べ始めてくれた。 「うん、美味しい」 気のせいかな。口の端が綻んでいるような・・・。 「ナオさんは、一樹さんには、勿体ないくらい家庭的な方です」 「あぁ、そうだな」 ぼそぼそと、呟く鏡さん。そんな二人に対し、一樹さんは本当にマイペース。 「ナオ、食べたよ、見てみ‼」 空になった、アスパラの肉巻きが乗っていた皿を自慢気に見せてくれた。 「意外と美味しいね、アスパラ」 子供のようなニコニコの笑顔で。 「なら、私のも差上げますよ」 「一樹さん、これも」 橘内さんと、鏡さんが、アスパラの肉巻きを箸で掴んだ。すると一樹さん、お皿を持ったまま、僕の後ろに隠れた。 「ナオ、助けて‼」 「一樹さん、ちょっと・・・」 子供のような、ではなく、本当に彼は子供みたい。甘え上手で。 「橘内、いつもこんな感じ⁉」 「えぇ。一樹さんの面倒をこうやって見れる人は、ナオさんしかいません。だから、鏡に反対されても、ナオさんを連れてきたんです。はたから見たら、バカップルですが・・・」 「ふぅ~ん、そっか」 鏡さん何やら考え込んだ。 もう、自分に火の粉が飛んでこない事を確認し、一樹さん、モグモグと、大好物のバンバーグを食べ始めた。「頬っぺたが落ちそうだよ」 蕩けるような笑顔を見せてくれた。
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