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初めては、ぜんぶ君がくれたもの。
俺の恋人は、特別をたくさんくれる素敵な人だ。
特別な気持ち、特別な思い出、特別な体験……それらは掛け替えのない大事な宝物になる。
「好きです、付き合ってくださ、い……んー微妙だなぁ…」
昼休み、校舎裏にある木の下で、俺は告白の練習をしていた。
別に付き合いたい人がいた訳じゃないんだけれど、クラスメートが恋バナで盛り上がってるのを聞いて、不安になったからだ。
"好きな子が出来たら、どんな風に告白する?"
多分、話の主題はそれだったと思う。
雑誌で女子はこういうのが喜ぶって書いてあったとか、緊張するから電話が良いとか、ロマンチックな場所で…などと話してるのを授業の予習をする振りして盗み聞きしてた。
断然、直接会って告白すべきだと思う。
けれど、いざ告白するぞと立ち上がった時にどうするか分かっているのかと問われたら、そうではないと答えざるを得ない。
だから考えた。
勉強も予習と復習が必要なように、告白も予習と復習を繰り返せばスマートにこなせるんじゃないかって。
「君の事が好きなんだ…もし付き合ってくれるなら、この手を握ってください!」
家のパソコンを使って調べてきた告白方法を数パターン練習する。
果たして、いつか手を握ってもらえる日はくるのだろうか…そんな雑念が過ぎって、打ち消そうとした時だった。
「いいぜ」
手を握られる感触がする。
驚いて顔を上げると、そこにはクラスメートのYが立っていた。
木陰からはみ出ている彼は、日の光に当てられて、白い頬に赤みが帯びているように見える。
キラキラして、それでいてとても可愛く見えた。
暫く時間が止まったみたいに動くことが出来なかったけれど、後から思考が追い付いてきて、重要な事に気付いた。
「ほんと!? 恋人になってくれるの? ありがとう…!!」
こうして、青春の1ページならぬ1文で終わりそうだった今日は、特別な、人生で最高の日になったのだ。
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