10年

3/5
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
 期待を胸に秘め、いつもと同じように淡々と仕事に励む。 各部署から上げられてくる稟議書、出張の伺い書、お得意先との電話交渉…やることは山ほどあった。 浮かれてばかりはいられない。 自分のことはさておき、気持ちを切り替えて仕事に没頭した。  春が過ぎ、雨の季節になっても、元妻からの連絡は何もなかった。 そう簡単に会わせてくれる訳がない。 再度娘に会えるその日まで、芳樹は自分の生活スタイルを変えずにいようと決めていた。 娘と再会できても変えるつもりはないが、できる限りの規則正しい生活。 いつ娘が来てもおかしくないよう、その瞬間を想像しながら自分を戒めた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!