小野芳樹

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小野芳樹

「行ってきます」  だれもいない部屋に向かって、芳樹は声を発した。いつもの癖だ。玄関の鍵をかけて階段を下る。そのまま青空駐車の車に乗り込み、仕事場へ向かう。  車の中ではいつもFMラジオを聞く。パーソナリティの進行で、最新の楽曲やトレンドニュースが流れる。それを聞き流しながら、いつもの道を運転する。  会社に着き、階段で2階へ。カードをかざして出勤打刻をしたあと、オフィスへと入る。 「おはよう」 「おはようございます」  まだ数名しか出勤していない職員に挨拶し、一番奥にある自分の席に着く。芳樹は総務課の課長だ。  席に着くと、会社の各部署から上がっている稟議書に目を通す。芳樹の勤める会社は大手自動車会社の下請け会社で、本社からの信頼は厚く、下請け会社の中でも本社に継ぐ大きな会社だった。  その総務課長ともなると仕事量は多く、毎日朝早くから夜遅くまで、他の職員よりも長い時間勤務していた。
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