一人暮らし

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一人暮らし

 芳樹の一人暮らしが始まった。  朝起きて、自分で朝食を作り、洗い物はそのままに、早急に出ていく。玄関の鍵は忘れずかけて、大急ぎで階段を下り、車へ乗り込む。  ゴミ出しの日はゴミ袋を持って階段を下り、アパートの端にあるゴミ捨て場へ投げ入れ、出社。  当然のことだが、今まで妻がしてくれていたことを全て1人でしなければならない。  それよりも、誰もいない部屋へ帰ること、娘の出迎えのないことが、最も芳樹を苦しめた。  今まで当たり前と感じていた日常が余りに脆く崩れ去ったこと、一人という生活が、ここまでに孤独と寂しさを感じさせる現実を、心底目の当たりにしてしまった。    ただいまを言う相手もいない、話しかけてくれる相手もいない、そんな些細なことが重く芳樹の心にのしかかっていた。
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