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畑に行くつもりだった久子は連れていた子供の手を引き慌てて家に戻った。 在宅中だった夫に仔細を伝えると、俺が話をつけるから家に隠れているようにと言われ、子供達と奥の小部屋に逃げ込んだ。 「それがまさか、離婚されて家を追い出されることになるなんて思いもしなかった。」 その夜、久子に夫が告げたのは『お前を離婚する。あの男の元へ行け。』という言葉だった。 『安心おし。俺の本心では無い。どうせあの男はヤクザ者。直ぐにお前に飽きて捨てるに違いない。 そしたら俺の処に戻って来ればいい。俺は再婚せず子供達と待っているから。』 今となっては、その言葉は久子を説得するための方便だったのかも知れない。 若しくはいつまでも久子を手放さず、それどころか益々執着を見せる辰の様子に夫が諦めたのか。 いずれにせよ、前の夫は既に再婚している。 もうあの家に久子の居場所はない。 …… 「そんないきさつで夫婦になったのか。」 「鬼畜の仕業よ、全く。」 泣く泣く辰の元に向かった久子は、辰の伸ばしてきた手を思い切り叩くと、叫んだ。 『あんたとは何があっても夫婦にはならない!』 威勢のいい啖呵に苦笑いを零すと、『それじゃあその内ゆっくり、な。』と久子の帯に手を掛けた…… …… 「一度も逃げなかったんかい?」     
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