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それでもしゃくな気分は変わらず、箪笥の引き出しにポンと放り込んだ。 そして今しがた送り出した洋二の後ろ姿を瞼に浮かべた。 普段は瓦職人らしい半被と地下足袋のそれが軍服とゲートルで固められた後ろ姿。 一瞬その姿が真っ赤に染まる。それは夕陽の色よりもさらに赤い血の色に似ていた。 久子は頭を振り、嫌な妄想を脳から追いだした。 どうぞご無事で。 久子は帯を普段使いのものに締め直すと、直ぐに縄ないの準備を始めた。
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