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戦況がどうなっているか、今一体どれだけの占領地があるのか、といったことに久子はとんと関心がなかった。 それよりも関心があるのは食糧のこと。鈴子は段々品薄になってきていると言うが、雪深いこの辺りは元々冬は品薄だ。今以上に物資が減るのはさすがに困る。 米は親戚が持ってきてくれた。一人で食べる分などたかが知れている。春までは持つだろう。 だがその先は? 取り敢えず子供を産んでしばらくは辰が残していったと思われる支度金で凌いで、首が据わった頃に働きに出る積もりだが。まず乳飲み子を抱えた自分を雇ってくれるところがあるのかどうか、それすらも見通しがなかった。いざとなれば母親のところに預けて、とも考えてはいるがいかんせんお乳のことがある。 ーーどうしたもんだろう あれこれ考えていると、鈴子が思い出したように久子に問うた。 「そういえば辰さんから便りは?」 そのひと言で久子は我に返った。 そして「ある訳ないわ。」と吐き捨てると、さっさと元の場所に戻り茣蓙の上に座り直した。 「あの人とはもう縁切りなの。」 ぶっきらぼうに柿を鈴子に突き出すと、久子は自分の分を口いっぱいに放り込んだ。 「ごめんよ、忘れて。」     
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