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「さあ。あの人とはもう他人なんで。」 言葉に出して更に自分で自分を抉る。 そんな久子の心はいつまで経っても生傷が癒えず、じくじくした痛がゆさを抱えていた。 その夜、洋二が久子のところにやってきた。 「アニキが帰ってくるまでは俺が久子ネエ見てるつもりだったけど……どうやら無理みたいだ。」 明日の朝出発するという洋二に、久子は「寂しくなるわ。」としか言えなかった。 弟のように思っていた洋二が戦地に向かう。もしかしたらもう二度と会えないかもしれないと思うと、久子の心がまたずくずくと痛み始めた。 明日の支度は手伝おう、そうだ白米の握り飯を持たせよう。沢庵も。それが自分にできる精一杯…… 「アニキから手紙が来たよ。」 突然洋二が切り出した言葉に、久子は固まった。 久子がひどく動揺していることは傍目でもわかるだろうに、洋二は更に言葉を続けた。 「アニキ、南洋に着いたって。日付は1月20日だった。皆と元気にやってるって。軍属だから気楽だって書いてあった。」 「私には関係ないわ。」 「ハハッ、アニキが言ってたとおりだな。久子ネエに送ってこずに俺に送ってきたのはアニキがここを出る前からの約束さ。久子ネエに送っても見る前に破るだろうからって。     
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