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……自分になんかあったら、久子ネエを宜しく頼む、って書いてあったよ。」 何を今更。 皮肉な笑いが久子の頬に浮かぶ。 「あの人にそんなこと言うだけの資格があると思っているのかしら。」 「久子ネエ?」 久子は火鉢に掛けてあるやかんのお湯を湯呑に注いで洋二に渡した。 「私の幸せを全て奪ったあの男がそんなことを言う資格はどこにもないのよ。」 「アニキは何時だって久子ネエを大事にしてたじゃないか?」 久子は、はっ、と吐き捨てると洋二にヒタリと目を当てた。 「もしも出征前に重たい話を聞きたいというなら聞かせてあげるけど。」 二人の間に沈黙が降りた。 静寂を破ったのは洋二だ。 「吐き出すことで久子ネエの気持ちが少しでも軽くなるならさ。聞かせてくれよ。」 まさかそんな言葉を返してくるとは思わなかった久子は、戸惑ったが。 「いいよ話したげる。戦争が終わって、あんたが誰かを好きになった時の為のいい教訓になると思うわ。」 火鉢に両手を当てて暖を取りながら、久子は語り始めた。
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