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第2話 12月21日(金)22時20分 居酒屋・鳳鵬
「もうっ、俺は……ダメな男なんです! 男として生きていけないっ!」
「ちょっと……いったい誰よ、雪村くんにこんなに飲ませたのは!」
「聡子さんっ! 聡子さんまで俺を見捨てるんですか!」
雪村 聖は半分しか開いていない目で、同じ課の先輩の聡子を見上げた。狭い視界の中で、美しく整っているはずの聡子の顔が福笑いのように歪んで見える。福笑いは正月の遊びじゃないか、と聖は回らない頭で考えた。
「福笑いなんてしてる場合じゃないんですよ! クリスマスが先じゃないですか!」
「と、突然どうしたのよ」
勢いづいて立ち上がったものの、アルコールの入った身体は言うことをきかず、再びどたばたと椅子へ崩れ落ちる。背中に添えられた聡子の手のぬくもりが切ない。
「もうすぐクリスマスだっていうのに、彼女に振られたんですよ! しかも初めてできた彼女だったのにっ……」
「もう二十回くらい聞いたわ、その話。で、振られた理由って結局なんだったの……って、そんな目で睨まないでよ!」
突然目つきの悪くなった聖に驚いた聡子が、聖と仲の良い同期の三田に視線で助けを求めた。
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