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「確かにルールを逸脱してしまったかもしれない。だが、君の力になりたかったんだ。君が悲しみに暮れているのを、見ていることができなかった」
蔵臼は組んだ脚を下ろし、身体をずいと前に出す。正面から見つめられた聖は一ミリも視線をずらすことができない。
「君が、もし……」
蔵臼の声に、聖ははっと我に返った。蔵臼は立ち上がり、聖の足元に跪く。ぎょっと身を引いた聖の指先が掴まれた。蔵臼は初めて見るような、少し自信のなさげな表情を浮かべている。
「嫌じゃなければ……これからも私にプレゼントを送り届けさせてほしい。クリスマスだけじゃなく、毎日でも、君に――」
これも魔法か、と思った。だが頭の片隅で、それはきっと違う、と誰かがささやいている。
胸の内が心地よくざわめき始める。
「ずるい! サンタさんばっかりずるいです!」
張りつめた空気を乱す戸名の声が、聖の背後から飛んできた。
「俺だって聖さんのこと、あんなにも好きだって伝えたはずなのに!」
「カイ、邪魔をするな。私に仕えているのならここは譲るべきだろう」
「あ、それを持ちだすなら、来年からソリ引いてあげませんからね!」
「なっ……」
「ぷっ」
突然始まった二人の言い合いに吹き出した聖を、蔵臼と戸名が同時に振り返った。
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