第2話 12月21日(金)22時20分 居酒屋・鳳鵬

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「戸名さんも来られたんですね。まだまだ私たちは大丈夫ですよ。皆さんもいいですよね?」  もちろんでーす、と元気な声があちらこちらから上がる。  蔵臼は安心した様子で、ありがとうと微笑んだ。その笑顔に思わず聖はほうっと息をつく。周囲の社員も同様だった。男も女もアルコールで赤らんだ顔をさらに上気させて放心している。が、すぐに我に返り、争奪戦が始まった。 「蔵臼さん、こちらにいらしてください! 私たちと飲みましょう!」 「戸名さんはこっち!」  人気者はいいなぁ――そんなつぶやきとともに、聖の世界は黒い渦の中に沈んでいった。 「おや……雪村くんはどうしたんだい?」  テーブルに突っ伏したまま微動たりともしない聖のもとへ、ようやく近づくことができた。蔵臼は聡子に声をかける。そう、あくまでさり気なく。 「ああ……どうやらヤケ酒を飲みたくなるようなことがあったようで」 「ほう?」  興味深げに眉を上げた蔵臼に、聡子は三田に目配せをして席を立った。三田は待っていましたとばかりに声を低めて話し出す。 「どうやら勃たなくなったらしいですよ。しかもその原因が、初体験で彼女に『早すぎる!』って言われたストレスのせいなんじゃないかって」  蔵臼は腕を組み、その話にじっと耳を傾けていた。     
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