第3話 12月24日(月)21時30分 雪村聖のアパート

4/5

73人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
 壊れたように笑いだした聖を、心配そうにサンタが見つめる。するとトナカイが音もなく前に出て、聖の胸元に鼻先を寄せた。 「トナカイ、さん……?」  黒々としたつぶらな瞳にじっと見つめられて、急に胸がきゅんと疼いた。昔から動物には弱いのだ。夢なら夢で、この摩訶不思議な状況を楽しんでしまえばいいやと思うほどに。  すりすりと寄ってくるトナカイの首に腕を回してみた。想像以上に毛足が長く、もふもふと柔らかい。 「うわぁ、ふわふわできもちいい……ん、え、えええ!?」  ふわり、と身体が持ち上がる。 「聖さんのお肌はすべすべですね!」 「ぎゃあああああ!」  聖は若い男に抱きかかえられていた。しかも、男の上半身は裸だ。無駄な脂肪は一切ついておらず、腕や胸はしなやかな筋肉に覆われている。 「こら、カイ。聖くんがますます驚いてしまったじゃないか」とたしなめるような声が下から聞こえてくる。 「だってサンタさん、聖さんを独り占めしようとしていたでしょう? そんなのずるいじゃないですか」  カイと呼ばれた男が唇を尖らせて抗議した。カイの腕のなかで硬直していた聖が、名前を呼ばれてびくりと跳ねる。 「これは、一体どういう状況なんですか……!?」     
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加