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壊れたように笑いだした聖を、心配そうにサンタが見つめる。するとトナカイが音もなく前に出て、聖の胸元に鼻先を寄せた。
「トナカイ、さん……?」
黒々としたつぶらな瞳にじっと見つめられて、急に胸がきゅんと疼いた。昔から動物には弱いのだ。夢なら夢で、この摩訶不思議な状況を楽しんでしまえばいいやと思うほどに。
すりすりと寄ってくるトナカイの首に腕を回してみた。想像以上に毛足が長く、もふもふと柔らかい。
「うわぁ、ふわふわできもちいい……ん、え、えええ!?」
ふわり、と身体が持ち上がる。
「聖さんのお肌はすべすべですね!」
「ぎゃあああああ!」
聖は若い男に抱きかかえられていた。しかも、男の上半身は裸だ。無駄な脂肪は一切ついておらず、腕や胸はしなやかな筋肉に覆われている。
「こら、カイ。聖くんがますます驚いてしまったじゃないか」とたしなめるような声が下から聞こえてくる。
「だってサンタさん、聖さんを独り占めしようとしていたでしょう? そんなのずるいじゃないですか」
カイと呼ばれた男が唇を尖らせて抗議した。カイの腕のなかで硬直していた聖が、名前を呼ばれてびくりと跳ねる。
「これは、一体どういう状況なんですか……!?」
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