絵を描かない二人の美術部

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 阿立先生は少し考えてうーんと唸ったあと、「やっぱりダメだ」ときりだした。 「小村さんを見ず知らずの他人に売り渡すなんて、俺には出来ない!──なあ、頼むよ。なんでも奢ってあげるからさあ」 ……。もうこの教師はダメだ!  僕が無視して進もうとすると、今まで黙っていた柏木さんが反応した。 「ん。なら、ボクサードーナツ全種二個ずつで手をうとう。どう?」 「柏木さん!?」  いきなりどうしたんだろう。目の前の教師崩れが憐れに思えたのだろうか。 「うーん……ボスド全種二個ずつ……よし。いいだろう。しかし『勝ったら』だ!適当にやったら許さないからな」 自分の立場をわきまえてから物を言って欲しい。 「ん。交渉成立。私と翔太郎で作戦会議するから、阿立は小村のところ戻ってもいい」  阿立先生は柏木さんの言葉が終わるよりも早く「サンキュー」と言って出ていった。くっ、いつか絶対懲らしめてやらねば。
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