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「──先に言っとくけどさ、」
僕はもう一度、ナツを見上げた。
ナツはイタズラな笑みを浮かべて、こう続けた。
「手は抜くなよ?──“アキ”のためにも、さ」
最後、ナツが微かに悲しそうな顔をしたのを、僕は見逃さなかった。それが何となく見てはいけないものだと思ったから、すぐにまた俯いて、「うん」とだけ返事した。声が震えていた。
ナツは僕の返事を聞いて満足したようで、「そうと決まったらさっさと学校に行こう?柏木がさみしがってるからね」と僕の腕をつかんで走り出した。
その時、また、アキの声がしたんだ。
──私じゃない、あなたのためでしょ?
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