題材ツアーと黄昏の日

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 結局、たどり着いたのは図書室だった。二、三人の生徒が本を探している。カウンターでは美人司書の小村さんと、例の男教師二人が立っていた。 「何で図書室に?」  僕がそう聞くと柏木さんは指を三本たてて僕の顔につきだしてきた。 「三つ。三つに絞ってきた」 「何を?」 「候補。絵にするところ、私のオススメ」 なるほど、そのうちの1つがここか。 「で、何で図書室を勧めるの?」 「図書室だから」  むしろ何を疑問に思うことがあるのかとでも言いたそうに、柏木さんは僕の顔を覗きこむ。  そこまできっぱりと断言されると一周回って清々しいものだ。  おそらく、いつもここで本を借りている柏木さんにとっては図書室というだけで価値があるということ………だろう、きっと。  柏木さんは付け加えるようにしてカウンターの方を見てこう言った。 「それに、小村もいる。小村を描けば絶対にどこかの変態教師二人が大量に買ってくれる」 「確かに………阿立先生と倉田先生なら50………いや、100枚くらいまでなら──」 「誰が変態教師だ、誰が!」 「そうです!阿立先生なんかと一緒にしないでください!」  あ、大変だ。どうやら僕らの会話はすべて変態二人に筒抜けだったようだ。小村さんもクスクス笑っている。
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