絵を描かない二人の美術部

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 放課後の特別棟は静かだ。特別棟にある部活は美術部、書道部、理科研の三つ。そのどれもが廃部寸前で、来年の5月の時点で部員が4人を下回ったら廃部になることが決定している。僕ら二人が来年の夏まで続けるとして、少なくともあと二人誰か入れないと、卒業した先輩にどやされてしまう。  柏木さんが4問目の説明を始めると、ドタバタと階段を駆け上る音が聞こえた。静かだからよく響く。 「阿立先生かな?」 「間違いない」  その足音は迷いなく美術室へ近づいてくる。  そして、開きっぱなしの入り口に息を切らしたその男が現れた。  明るい茶髪のくるくるパーマ。スラッとしたモデルのようなスタイル。一部の女子生徒たちに『パッと見イケメン』を略して『パケメン』と呼ばれている。そんな20代後半のこの男は美術教師、かつ我らが顧問の阿立奏斗である。ちなみに僕のクラスの担任だ。
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