56人が本棚に入れています
本棚に追加
/304ページ
二人が話していると、ツーブロックの男が言う。
「おい、姉ちゃんたちよぉ。次はどっちが脱ぐんだ? さっさと始めてぇんだが」
比奈は、灰色のラシャコートを脱ぎ、キャスケットをアウレリアの頭へ乱暴に被せた。
急に帽子を被せられ、少し呻くアウレリア。
そして、先ほどの彼女と同じように、腕につけていたヘアゴムを取り、ポニーテールを作る。
「あなたもこいつらも。こんなことなって、ただ騒ぎが大きくなるだけなんだから」
その姿を見た店内にいる全員が驚愕の表情になった。
動きが止まり、ただ比奈の方を口を開けて見ている。
そして、やがて声が聞こえだした。
「……加藤比奈だ」
「マジか? あの地下格闘技のチャンピオン水無尚人をぶっ倒したっていう!?」
「間違いねぇよ、本人だ」
ぽつりぽつりと聞こえ出すその声に、アウレリアは先ほど被せられたキャスケットをとって言う。
「ひゅ~!! なんだよ、お前有名人じゃねぇか。アイドルでもやってたんかよ」
嬉しそうなアウレリア。
ざわつく店内の中、ツーブロックの男が静かに言う。
「……能面ヅラに尻尾頭。見覚えがあると思ったらてめぇ、加藤比奈だな」
比奈は、両腕を組んでからため息をついて返す。
最初のコメントを投稿しよう!