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「さぁ、どうでしょうね? あたしに腕相撲で勝てたら答えてあげてもいいけど」
「しらっばくれんなよ。こっちはてめぇのツラを何度も見てんだ」
ツーブロックの男は、人が変わったように鋭い目つきになっていた。
先ほどの下卑た笑みを見せていた人物とは、まるで別人だ。
「ふん、チャイニーズがケツ持ちだからってイキってんじゃねぇぞ。宇慶の奴は、まだ香港にいんだろうが」
「ケツ持ち? 勘違いしないで。沁慰はただの友達よ」
ツーブロックの男は、わかりやすく不機嫌になると、舌打ちをしてから、目の前の東に小声で話し出した。
「ちょっとビビらしてやるくらいのつもりだったが、残念だ。もう兄ちゃんもあいつらも帰れねぇよ」
「俺たちを殺す気なの?」
前髪で顔が隠れているので表情がわかりづらいが、力のない声で返す東。
「俺はな、あの女が気に入らねぇんだよ。あいつを見てると昔いた能面野郎のことを思い出す」
そういうとツーブロックの男は、東の手を掴んで、無理やり腕相撲の態勢に持っていった。
「暴力女の荒川が最近カフェなんかやっておとなしくしているって聞いたが、能面尻尾女がここへ来たってことは、九能さんのタマでも取る気か?」
東は「そんなことはしない」と言ったが、ツーブロックの男は無視して続けた。
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