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自分より偉い人がいると、丁寧になるなんて。
それより今は……牛!!!
ステーキって言ったら、やっぱり牛!!!
絶対に牛だよね!!!
無表情の比奈だが、内心では心が弾んでいた。
ジュージューとなる鉄製ステーキ皿が、それぞれ前に置かれていく。
熱された鉄板から、赤ワインソースの美味しそうな匂いに、比奈の期待は高まっていた。
だがしかし――。
「こ、これはどういうこと……?」
比奈は、思わず声に出してしまった。
鉄板の上には、バターの乗ったジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、ブロッコリー、コーンなどの付け合わせ野菜しかなかったのだ。
九能は言う。
「さぁ、私のおごりですから気になさらずに」
その顔はとてもにこやかだ。
「ふざけないで!!!」
比奈が、急にソファから立ち上がって怒鳴りだした。
それを見て東は驚いているが、アウレリアは今にも大笑いしそうな顔をしている。
「あなた……わざとね。あたしが牛好きなの知っているくせに、わかっていてこういう意地悪をしているのね」
そう言われた九能は、にこやかなまま何も言わない。
比奈は立ち上がったまま俯き、ワナワナと震え始めると、顔を上げて九能へ叫んだ。
「ブチコロ助ナリッ!!!」
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