第15話 牛がないじゃない

5/5
56人が本棚に入れています
本棚に追加
/304ページ
「どういう風の吹き回し? こんな素直に話そうとするなんてあなたらしくないじゃない?」 「やれやれ、相変わらず疑り深いと言うか、用心深いというか」 「あなた相手に、石橋を叩き過ぎるなんてことはない」 九能は、ヘラヘラとまたフォークでジャガイモを食べる。 そして、グラスに入ったミネラルウォーターを、また一口飲んでから言う。 「こっちにも都合がありましてね。これ以上荒川さんに暴れてもらうと非常に困るんですよ」 「困る? 何のこと?」 「それはあなたに関係のない話だ」 そう言われた比奈は、何も言えずに黙った。 それから九能は、カフェビアンキを襲った人間と、その人物がどこにいるかを説明した。 そして、それに付け加えるように続ける。 「そうだ。あの子を覚えてますか? ほら、闇ウェブの管理人だった子。あの子のサイトから大量の銃器とアッパー系のドラックがやりとりされていましたが、おそらく荒川氏じゃないかな」 「それって睦月(ムツ)くんの……。それに荒川さんが銃器とドラック……?」 無表情だった比奈の顔が(ゆが)む。 「もしかしたら、今日のお昼にでも届いているかもしれませんね」 「じゃあ、荒川さんは……」 そういった比奈の顔は、何かに気がついたようだった。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!