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スーロンは、まるで自分のことのように感情移入してコントローラを握り締め、プレイしている。
桐花が聞いたところ、このゲームに出てきたパーティーは、スーロンの中東時代の仲間を思わせる風貌をしているらしい。
意気込んで戦っていると、敵のボスが「こりゃたまらん」を言い、何か技を放ってきた。
そして十字の陣形の中心にいた、皇帝と呼ばれているキャラクターが殺される。
「あぁ……」
悲しい音楽と共にスーロンは声を漏らすと、肩を落とし始め、猫背になっていく。
皇帝が殺されると、いつの間にか城に戻った画面になり、先ほどまで戦っていたパーティーのメンバーでもあった皇子に声をかけていた。
ベットで死にかけている皇帝が息子へ、謎の女魔導士から教わった秘法を使い、己の身につけた技能を任意の人物に引き継がせるというイベントのようだ。
皇帝は、“己の人生を捨てて戦う覚悟がある、強い意志を持った人間”のみに受け継げると言う。
「うぅ……うぅ……」
スーロンは、それを見て突然泣き崩れた。
コントローラーから手を離して、両手で顔を覆っている。
「えっ!? なんで!? そんな泣くとこだった!?」
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