第17話 ココアの包容力

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桐花は、泣き出したスーロンに驚き、必死で(なぐさ)めていると、半蔵が三人分のマグカップをトレイに乗せてやってきた。 湯気が立ち上るマグカップにはココアが入っていた。 桐花は受け取ったマグカップを、すぐにスーロンへ渡す。 スーロンの背中を(さす)りながら、落ち着いて飲むようにと優しくいう桐花。 両手でカップを持ったスーロンは、少しずつココアを飲んでいくと、やはり甘いものが好きなのか、次第に泣き止んだ。 それを見て安心した桐花は、自分もマグカップに手をつけ、ココアを飲む。 桐花がハッと驚いた顔をして言う。 「おいしい……。ココアがこんなにおいしいなんて知らなかった」 「うんうん」 その横で、目を真っ赤に腫らせたスーが(うなづ)いた。 半蔵は、サングラスの位置を直しながら、ゆっくりと立ち上がる。 「ココアの暖かい包容力に勝てるのは女神の抱擁(ほうよう)だけだ」 桐花は思う。 ……いや、立つなよ。 ホント痛いな……。 桐花は、無視はまずいと思い、一応言葉を返した。 「じゃあ、あたしに女神は無理ね。そんな包容力なんてないもの」 半蔵は、腰を下ろし、桐花を見つめて言う。 「なりたかった自分になるのに遅すぎるなんてことはない」 「それ……ジョージ・エリオットでしょ」 「よく知っているな」 「イギリスの作家は大体チェックしてるわ」     
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