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第3話 みすぼらしい建物に住む男
新宿から小田急線に乗り、海老名で相模線に乗り換える。
週末というのもあってか、そこそこ混んでいて比奈は乗り疲れしていたが、アウレリアは少し楽しそうだ。
「いや~こんだけゆっくり電車で移動するのは初めてだわ!」
嬉しそうに言うアウレリア。
「子供か」
比奈はボソッと言った。
そして、彼女がいう駅で降り、ようやく目的地に到着した。
「着いたわ。このアパートよ」
都内から約一時間半――。
そこには外国人であるアウレリアにもわかるほど、みすぼらしい建物だった。
アウレリアは思う。
……おいおい、まさ比奈の男って汚いおっさんとかじゃねぇよな。
アウレリアはさらに深読みする。
……待てよ。
あいつのおっさん臭い食べ物の趣味や、だらしないとこは、もしや男の影響なんじゃ――。
比奈は部屋を見つけたようで、チャイムを鳴らす。
しかし、誰も出てこない。
比奈は、ドアについている郵便受けを開けて声を出す。
そして、それが終わると、スマートフォンを出し、メールを送ってから電話をかけ始めた。
その後、ドアが開いた。
そこには、上下黒の服を着た小柄で細身の男が立っていた。
アウレリアは思う。
……おっさんじゃない。
肌の色が白いせいか、妙に若く見える男だ。
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