第1話 五人の女

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第1話 五人の女

(きらび)びやかなネオンが目立つ建物に入っていく黒髪の女性――。 前髪は目にかかるくらいで、あとは後ろで一つに束ねた髪形をしている。 ――女性の名は加藤比奈(かとうひな)。 パンツスタイルの黒スーツを着た彼女は、顔立ちは整っているが、表情の変化はほとんどない。 不機嫌に見えるが、そんなことはなく、これが彼女の普段の顔だ。 中へ入ると客室を選べるパネルが見えた。パネルには点灯しているものと暗くなっているものとがあり、受付は外から見えないように囲われていて、小さな受け口用の隙間がある。 ロビーにある客室パネルを横目に、フロントを通り過ぎて、目的の部屋へ。 廊下はブルーライトで照らされており、落ち着いた雰囲気で人の気配はまるでない。 目的の部屋に着いた比奈は、ポケットからスマートフォンを取り出して、操作してからドアを開け中へ入っていった。 「みんな!」 部屋の中には四人の人物がいた。 一人は、部屋にある電気ポットで人数分のコーヒーを入れている。 もう一人はソファでかったるそうに寝転んでいた。 そして、ベットには二人、お互いに寄り添いながら腰掛けている。 全員女性だ。 「比奈ちゃん! 無事でよかったよぉ」     
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