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1、守護神
『サスケ、あきらめろ・・・』
爺ちゃんはそういってうつむいた。見えるのは爺ちゃんの白髪だ。爺ちゃんはオレの先祖神・守護神、守護霊でもある。
オレの祖父ちゃんと祖母ちゃんは晩婚だった。そして父ちゃんも母ちゃんも晩婚で、オレが十歳のとき、祖父ちゃんと祖母ちゃんが亡くなった。優しい二人だったから、オレは神殿へ行って、
『優しい二人なのに、なんで死なせたんだ?
祖父ちゃんと祖母ちゃんは、オレをうちの猿田比古神社の、一人前の跡継ぎにするといったんだぞ!
なのに、もう、修行を教える人がいないぞ!
神さんなら、責任をとれ!』
オレはあらゆる文句をいった。すると神殿から、
『祖父ちゃんと祖母ちゃんは先祖神の爺ちゃんと婆ちゃんになって、お前の中にいる』
と妙な声が心に浮んだ。
それ以来、爺ちゃんと婆ちゃんはオレの心に同居している。
『なあ、サスケ、アイツはやめとけ。思いやりがなさすぎる』
爺ちゃんが顔をあげた。顔立ちは、何といったっけ、あの歌手。日本人で、日本人に見えない人・・・。思いだした。平井堅。あの人に似てる。そして瞳はブルーだ。
日本人にブルーの瞳はいないって?そりゃあ、認識不足だ。オレの幼友だちの幸の瞳はブルーだ。幸はチンコロねえちゃん。顔もチンコロ。カラーコンタクトしてるように見えるけど、瞳のブルーは本物だ。みんなにからかわれるから、最近、黒い瞳に見えるコンタクトをしてる。
『好きや嫌いは、二の次だ。
人としての感情がないんじゃよ。マア、欠陥人間じゃな。
見た目が良いだけのは、よくおるんよ』
爺ちゃんが妙な方言でいい、座卓の茶碗をとった。お茶を飲んでる。妙な感じだ。どう見たって日本人に見えない白髪の青い目の爺ちゃんが、煎茶を飲んでるんだ。おまけに、座卓には花月堂の和菓子・淡雪時雨があるんだから・・・。
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