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ご飯は炊いてある。ちらし寿司の素はある。具材は、母ちゃんがみんな用意して出かけたのを、爺ちゃん、知ってて、ちらし寿司を話したな。タマゴを焼いて錦糸玉子作るぞ。
オレはタマゴ三個を茶碗に溶いて、薄焼きタマゴを焼き、千切りにした。
爺ちゃんがオレの背後から調理を見ている。
ご飯をボウルにいれて、散らし寿司の素を入れかきまぜる。サクサクサクとしゃもじで切るように。婆ちゃん、こんなことしないんだろうな。
『あんまり、婆ちゃんと呼ぶな。あのスタイルだ。
婆ちゃんと呼ぶと怒るぞ』
『じゃあ、なんて呼べばいいん?ズーメか?アハハッ』
『和名は気にくわん、そうジュヌビィエーヴといっとった』
「まああの顔であのスタイルだから、それもありだね。
だけど長すぎるよ。ジニーでいいよ」
婆ちゃんはスタイルがいい。脚が長い。金髪に近い薄茶の髪をしてる。瞳はグリーンだ。アハハッ、魔法使いジニーか。この名前、なんか映画にあった気がする。妖怪ジニーか?ちがうな。美魔女ジニーだな。
爺ちゃんは道祖神の猿田比古神さんだ。婆ちゃんは爺ちゃんの奥方、鈿女神さんだ。
『バカいってんじゃない!
ダンゴをこねてんじゃないよ。
もっと、切るように混ぜんかい!
ご飯が潰れるだろう!』
頭上から声が降ってきた。現れたな、妖怪ジニー!
『あたレゃアンタの守護神だろう!守護霊より格上だ!
ジニー姐さんとお呼び!ジニーの姐御でもいいさ!』
なんだかんだいって、婆ちゃん、寿司飯つまんでる。
『ジニー姉さんと呼ぶよ。婆ちゃん』
『アホか!姉さんの字がちがうべさ。
ジニーでいいよ!
もっとよく混ぜんかい!味がまばらだベ!』
婆ちゃん、ご飯を混ぜる端から食ってる。ちらし寿司になる前にご飯が無くなっちゃうぞ。
『婆ちゃん、食べんじゃないよ!
爺ちゃん、食べるなっていってよ!』
『私のサルタンを爺ちゃんと呼ぶな!
本名はサルタンだ。サタンじゃねえぞ。
なのに蝦夷のヤツら、猿田比古なんぞ呼びおって。
私は鈿女と呼ばれたんだぞ。
許せん!』
婆ちゃん憤慨してる。だけど、その割りに興奮してない。口先ばっかだ。笑いながら寿司飯食ってる。オレは婆ちゃんにいった。
『婆ちゃん、話すか、食べるか、どっちかにすれば』
婆ちゃんは美人だ。爺ちゃんより背は低い。婆ちゃんの身長は百七十センチメートルといってたな。すらりと伸びた脚を、スキニーなジーンズに包んでる。白いハイネックのカシミアセーターがくびれた腰と形のいい胸にフィットしてる。今日はカジュアルな服装だ。薄茶のロングヘアーと緑の瞳、彫りの深い顔にマッチしてる。これなら、三十代に見えるぞ・・・。うん?昨日は、巫女さん姿だったぞ!もしかして・・・。
『あたりだべ。し○○ら服から、借りたんさ。明日、返すさ』
うわっ!うわっ!
『心配ねえべ。こうして腕まくりしてる。
汚れたら、ミズハに洗ってもらう』
「なんで、罔象女神さんにふるの?
着てるんは婆ちゃんだろう?」
罔象女神さんは吉野の水の女神さんだ!そして、うちの猿田比古神社の祭神でもある。
オレは寿司飯を食ってる婆ちゃんに呆れた。
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