3、サッチー

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 放課後、チンコロねえちゃんと奈都を連れて、家の近くの豚珍館(とんちんかん)へ行った。幸に聞えないよう、こっそり事情を話すと、店主の原田さんは、 「支払いはあとでいいから、サッちゃんを慰めください」  といった。原田さんはうちの神社の氏子(うじこ)だ。父ちゃんと親しい。何かにつけて神社に来て父ちゃんと相談している。その甲斐があって、豚珍館はいつも繁盛している。 「さあ、なんでも注文してくださいよ。  満腹で動けなくなったら、中沢さんの家へ送りますよ!」  カウンターに座っている幸と奈都に、原田さんは笑顔で注文を訊いた。オレやオレの家族が豚珍館に行くと、カウンターに座ろうがテーブル席にいようが、必ず原田さんが出てきてあいさつし、注文を訊く。律儀な原田さんだ。豚珍館には原田さんと息子と姉の夫の三人のコックがいる。下準備するのは原田さんの姉と妹だ。接客は原田さんの奧さんと二人の娘と息子の奧さんと妹の夫の五人だ。豚珍館は家族経営の店だ。 「味噌ラーメン!」  幸がそういうと奈都も味噌ラーメンを注文した。オレも味噌ラーメンにした。  一敗目を食い終える前に、幸と奈都は二敗目を注文した。オレも味噌ラーメンを注文した。そして、二敗目が終わる前に、二人はまた三杯目を注文した。  ラーメンを二杯も食えば、もう何も入らん。オレはもう食えなかった。なのに、幸は、なんだもう食えねえのかとオレを見ている。 「サスケ!餃子食うか?」 「いや、いらない・・・」 「そんなら、餃子二人前ね!」  こいつらの腹んなかどうなってるんだ?そのまんま糞になって出るんだろうな。そんなことを考えてたら、今度は奈都が注文した。 「そのあと、杏仁豆腐二つね。  だいじないよ。別腹・・・」  原田さんは愕きを隠せないまま、首を左右にふっている。  ラーメンと杏仁豆腐を食い終えると原田さんは香りの良い焙じ茶を出してくれた。脂肪を減らしリラックスさせ健康によいという。だいぶ幸を気づかっている。幸も奈都も満腹になって満足しているようだ・・・。ああ、ここに来ることは、これだったんだな・・・。爺ちゃんの思惑だ。幸にいろいろ訊こうと思ったが、訊くのはやめよう・・・。 「なあ、二人でサスケんちへ行っていいか?」 「ああ、いいよ。ゆっくり休むといい」  オレは原田さんに礼をいい、二人を連れて豚珍館を出た。
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