月影

7

　――新月の夜、零時を越えたら外を出歩いてはいけないよ。
　月影がお前の命を奪いに来るから。
　月影はね、新月の夜に現れる村人の影なんだよ。誰が影を奪われたのか分からない。誰が選ばれるのか分からない。
　村人に成り済ました影は、月を探して零時過ぎに徘徊するのさ。
　――もし月影に会ってしまったら、逃げられやしないよ。
　光が生み出した影を持つ者を、殺してしまうのだから。
　人間の影は光が無きゃ出来ない。影しかない月影は、それが欲しくてたまらない。
　――欲しいから奪うのさ。命ごとな。

　だから、絶対に守りなさい。決して新月の夜に出歩いてはいけないよ。
　――死にたくなきゃあね。

了