4

3/3
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「行けそう?」 「うん……、なんかこの臭い……。酷い臭いがする」 「血生臭いね……。人の内臓は臭いから……」 「早く、早く行こう?」  小声で彼女は言うと、僕の腕を引っ張った。  ――僕達は走った。高台を目指して。  途中何度かあの不快な音が闇夜に響いたが、今更気にする余地も無く、無視して先を急いだ。  あれだけ遠くに感じた高台だが、ようやく階段が見えてきた。……よし、彼処(あそこ)なら。 「後少しだから頑張って!」 「ぐっ……うん。」  息が辛いのだろう。彼女は(うめ)いた。  ようやく高台に辿り着いた時、僕の右手は血濡れになっていた。――彼女の左手も。  服の至る所に血飛沫が着いていて、中には肉片ではないかと思われるマグロの赤身の様な物まで。 「やっと、着いたね……」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!