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「行けそう?」
「うん……、なんかこの臭い……。酷い臭いがする」
「血生臭いね……。人の内臓は臭いから……」
「早く、早く行こう?」
小声で彼女は言うと、僕の腕を引っ張った。
――僕達は走った。高台を目指して。
途中何度かあの不快な音が闇夜に響いたが、今更気にする余地も無く、無視して先を急いだ。
あれだけ遠くに感じた高台だが、ようやく階段が見えてきた。……よし、彼処なら。
「後少しだから頑張って!」
「ぐっ……うん。」
息が辛いのだろう。彼女は呻いた。
ようやく高台に辿り着いた時、僕の右手は血濡れになっていた。――彼女の左手も。
服の至る所に血飛沫が着いていて、中には肉片ではないかと思われるマグロの赤身の様な物まで。
「やっと、着いたね……」
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