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彼女がその言葉を紡ぐことはなかった。
暗い高台の暗い地面に、真っ赤な花が広がった。
蝋人形と人間の間みたいだ――。
僕は不謹慎だが、それをとても美しいと思った。死しても尚、揺るぎない視線は変わらなかった。
どうしようもなかった。抑えられなかった。取り返しの付かないことだということは、頭の片隅で理解していた。
"新月の夜、零時を越えたら外を出歩いてはいけない。"
目の前の綺麗な死体に目が眩みながら、僕は夜空を仰いだ。東の空の境界が白んでいる。
――夜明けは近い。
それと同時に月影も光に消える。影って何だろう。存在意義って何だろう。
――どうして、月影が生まれたのだろう。
答えは誰も知らない――。
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