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6
――八月二日、早朝。
熱帯夜だったため、夜中に何度も起きてしまった。結局満足に寝ることは叶わず、鳥と共に起床したのだった。
寝る前に掛けたはずのタオルケットは、足元でしわくちゃになって丸まっていた。
昨晩はどうすることもできなかった。せめて新月じゃなければ……。一夏の思い出として心の一ページに刻めたのに。
「あら、もう起きてるの?」
母さんはいつものエプロン姿で現れた。これから朝食でも作るのだろう。
「暑くてて、寝れなくてさ」
「そう……昨晩は暑かったものね。……大変ね」
母さんは含みのある言い方をした。まだ僕は、夢から醒めていなかったのかも知れない。
居間に行くと、珍しくテレビがついていた。母さんが朝からテレビをつけることは滅多になかった。
――まさか、もう?
『――続いてのニュースです。昨夜未明、高台の月兎像の前で、少女の遺体が発見されました。現場の状況から、少女は高台に一人でいたと思われ――』
朝から重い話題だな。それにしても、この小さな村で遺体だなんて物騒だな。
流し見をしていたが、アナウンサーが告げた遺体の名前に僕は震えた。
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