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 ――八月二日、早朝。  熱帯夜だったため、夜中に何度も起きてしまった。結局満足に寝ることは叶わず、鳥と共に起床したのだった。  寝る前に掛けたはずのタオルケットは、足元でしわくちゃになって丸まっていた。  昨晩はどうすることもできなかった。せめて新月じゃなければ……。一夏の思い出として心の一ページに刻めたのに。 「あら、もう起きてるの?」  母さんはいつものエプロン姿で現れた。これから朝食でも作るのだろう。 「暑くてて、寝れなくてさ」 「そう……昨晩は暑かったものね。……大変ね」  母さんは含みのある言い方をした。まだ僕は、夢から醒めていなかったのかも知れない。  居間に行くと、珍しくテレビがついていた。母さんが朝からテレビをつけることは滅多になかった。  ――まさか、もう? 『――続いてのニュースです。昨夜未明、高台の月兎像の前で、少女の遺体が発見されました。現場の状況から、少女は高台に一人でいたと思われ――』  朝から重い話題だな。それにしても、この小さな村で遺体だなんて物騒だな。  流し見をしていたが、アナウンサーが告げた遺体の名前に僕は震えた。
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