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 村と聞いて連想するものは、村八分、田舎、山、虫、(たたり)――、暗いイメージが浮かぶだろう。  村で生まれ育った僕でさえそう思うのだから、そうなのだろう。  ――八月朔日(ついたち)。  夏休みに突入して二週間程。うだるような暑さに辟易して、クーラーの効いた涼しい部屋で一人、僕は宿題と(たわむ)れていた。  この間、友人と遊んだのは二日だけ。村の(ささ)やかな花火大会の鑑賞と、隣町にある映画館に、話題のホラー映画を観に行っただけ。  世間は来年の今頃を待ち遠しく思っているのだろうか?まぁ、こんな田舎じゃ対岸(たいがん)の火事だが。  視線を机に戻し、法則に従って並ぶつまらない数字達に苛立つ。僕はどうも数学という物が好きになれなかった。  とっくに切れていた集中力を働かせる気もなく、僕は気分転換に散策することにした。  台所で食器洗いをしていた母さんに断りを入れ、僕は履き潰したスニーカーの紐を結ぶ。元は真っ白のスニーカーだったが、もう一年半も履いているせいか、お世辞にも白とは言えない土色をしていた。  ――ブチッ! 「あ……」  一歩踏み出そうとした瞬間、左足の靴紐が切れた。漫画みたいに突然、何の前触れも無く。  いや、もし漫画的な展開を望むとすれば、凶兆なのかもしれない。……なんて、この間ホラー映画を見たせいか、頭に浮かぶのは最悪の結末。 「……馬鹿馬鹿しい」  特に気にもせず、僕はそのまま外へ出た。
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