10人が本棚に入れています
本棚に追加
2
村と聞いて連想するものは、村八分、田舎、山、虫、祟――、暗いイメージが浮かぶだろう。
村で生まれ育った僕でさえそう思うのだから、そうなのだろう。
――八月朔日。
夏休みに突入して二週間程。うだるような暑さに辟易して、クーラーの効いた涼しい部屋で一人、僕は宿題と戯れていた。
この間、友人と遊んだのは二日だけ。村の細やかな花火大会の鑑賞と、隣町にある映画館に、話題のホラー映画を観に行っただけ。
世間は来年の今頃を待ち遠しく思っているのだろうか?まぁ、こんな田舎じゃ対岸の火事だが。
視線を机に戻し、法則に従って並ぶつまらない数字達に苛立つ。僕はどうも数学という物が好きになれなかった。
とっくに切れていた集中力を働かせる気もなく、僕は気分転換に散策することにした。
台所で食器洗いをしていた母さんに断りを入れ、僕は履き潰したスニーカーの紐を結ぶ。元は真っ白のスニーカーだったが、もう一年半も履いているせいか、お世辞にも白とは言えない土色をしていた。
――ブチッ!
「あ……」
一歩踏み出そうとした瞬間、左足の靴紐が切れた。漫画みたいに突然、何の前触れも無く。
いや、もし漫画的な展開を望むとすれば、凶兆なのかもしれない。……なんて、この間ホラー映画を見たせいか、頭に浮かぶのは最悪の結末。
「……馬鹿馬鹿しい」
特に気にもせず、僕はそのまま外へ出た。
最初のコメントを投稿しよう!