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歩きながら考えてみた。
――これはただの風習じゃないか。何の面白味もない。
何故出歩いてはいけないのか、"月影"が何なのかも不透明だった。どう呼ばれているかなんて知らなかったし。
しかし彼女のこの怯え様。尋常ではなかった。本当に信じていたのだろう。それは申し訳ない事をした。
「はぁ、まだ?まだかなぁ……」
「もうそろそろだと思うんだけどなぁ」
走った分も含めて四十分近く移動したが、高台への階段は一向に見えて来ない。
――おかしい。何かが変だ。
今回のルートを見る限り、高台へ再び戻るのに一時間十分程。チーム分けで時間を食ったため、肝試しがスタートしたのは確かそう、十一時ぐらい……。僕達が新月云々で騒ぎ始めたのが、すでに後残り三分の一の地点。
仮に慎重になって歩いたとしても、もう着いていなければおかしい。
「ねぇ、この道……こんな道あったかなぁ」
「え?……そういえば」
彼女に言われて周囲を見渡すと、ルートにはない見知らぬ道。村の道は知り尽くしているはずなのだが……。
「……あのさ、その、気づいてる……?」
「うん?」
少女は怯えを含んだ小声でそっと僕の右耳に囁いた。
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