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暗闇の高台に僕達二人だけ。
せめて綺麗な格好で迎えたかったな。得体の知れない液体でベトベトのシャツに、脂で汚れたスボン。
ふと横目で彼女を見ると、僕と同じく脂や肉片で汚れていた。ただ一つ僕と違うのは、彼女の左胸の下辺りがぐっしょり濡れていたこと。
紅い泡が次々湧いて、井戸の底みたいに大きな穴を覗かせていた。所々見える鮮やかなピンクは筋肉だろうか?
「ワンピースが台無しだね。それに、もう駄目みたいだ。僕も、君も――」
新月の夜、この村は街灯など無縁で何も見えない。僕の眼に映る彼女の影は、今にも崩れそうだった。
「……ぐぅ、かはっ!……私、途中で、見たの……」
左肺にまで傷が及んでいるのだろう。時折ヒューヒューと空気の抜ける音が声に混じっていた。ゴボゴボという血の泡の音も。
「……何を?」
全速力で走ったつもりだったけど、道中で確認する程の"何か"なんてあっただろうか?
「はぁ、うぅ……一緒に……参加したクラスメイトの……っ!死体を……!」
「……」
目の前の彼女は僕と対峙して尚、揺るぎない視線を外さない。
「だってっ……ぐっ、月影は――」
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